この記事は2025年9月24日に最新の情報に更新されました。
電動キックボードを安全・快適に、そして長く楽しむためには、定期的なセルフメンテナンスが欠かせません。
2023年7月の法改正で「特定小型原動機付自転車」という新しい区分が生まれ、より身近な乗り物になりましたが、自転車と同じように日々の点検が事故を防ぎ、性能を維持する鍵となります。
「でも、メンテナンスって何から始めればいいの?」「専門知識がないと難しそう…」と感じる方も多いのではないでしょうか。
ご安心ください。
この記事を最後まで読めば、あなたも自信を持って愛車のメンテナンスができるようになり、より安全で楽しい電動キックボードライフを送れるようになります。

自分でメンテナンスしてみたいけど、何から手を付ければいいかサッパリ…。壊しちゃいそうで怖いな。

大丈夫!この記事で紹介する基本の4つのチェックポイントから始めれば、誰でも簡単にできますよ。まずは愛車を知ることから始めましょう!
なぜ電動キックボードにメンテナンスが必要不可欠なのか?
まず初めに、なぜメンテナンスが「やった方が良い」ではなく「やらなければならない」ことなのかを理解しましょう。
理由は「法律」と「安全」の両面から説明できます。
法律(保安基準)で定められた点検義務
道路交通法において、電動キックボード(特定小型原動機付自転車)は「車両」です。
そして、車両の運転者には「運行前点検」が義務付けられています。
これは、安全に走行できる状態かどうかを乗る前に確認する責任がある、ということです。
具体的には、ブレーキの効き、タイヤの状態、ライトの点灯などをチェックする必要があります。
メンテナンスを怠った場合の3つの深刻なリスク
メンテナンスを怠った場合のリスク
- 重大事故のリスク: 最も怖いのが事故です。走行中にブレーキが効かなくなったり、ハンドルやタイヤのネジが緩んで操作不能になったりすれば、命に関わる事故に直結します。
- 製品寿命の低下と修理費用の増大: 小さな不具合を放置すると、他の部品にまでダメージが広がり、結果的に高額な修理費用がかかることがあります。定期的なケアは、長期的に見てお財布にも優しいのです。
- 性能の低下: タイヤの空気圧が低いだけで、最高速度が落ちたり、一回の充電で走れる距離(航続距離)が短くなったりします。愛車のポテンシャルを最大限に引き出すためにも、メンテナンスは重要です。

法律で決まってるんだ…。知らなかった。事故も怖いし、ちゃんとやらないとダメだね。

その通りです!でも難しく考える必要はありません。これから紹介する手順で、まずは週に1回のチェックから習慣にしてみましょう。
これだけは揃えたい!メンテナンスの必須工具&準備

DIYメンテナンスを始める前に、まずは必要なものを準備しましょう。
「形から入る」ことも、モチベーションを維持する上で大切です。
安全のための保護具
ケガを防ぐため、作業時は以下の保護具を着用することを強く推奨します。
- 作業用手袋(グローブ): 油汚れやケガから手を守ります。滑り止めの付いたものがおすすめです。
- 保護メガネ: ネジを弾いてしまったり、洗浄剤が目に入ったりするのを防ぎます。
【基本】最低限必要な工具リスト
工具の種類 | 主な用途 |
---|---|
六角レンチセット | 車体のあらゆるネジの締め付け・取り外しに使用。ミリ規格(mm)のものを選びましょう。 |
プラス/マイナスドライバー | ライト周りやカバー類のネジに使用。 |
モンキーレンチ | タイヤのホイールナットなど、サイズの大きなナットを回すのに使用。 |
空気入れ(圧力計付き) | タイヤの空気圧を測定・補充するために必須。 |
【応用】あると作業が捗る便利ツール
- トルクレンチ: ネジを適切な力(トルク)で締め付けるための工具。締めすぎによる部品の破損を防ぎます。
- 電動空気入れ: ボタン一つで設定した空気圧まで自動で入れてくれる優れもの。時間と労力を大幅に削減できます。
- パーツクリーナー/ウエス(布): 油汚れなどを洗浄する際に使用します。
【完全ガイド】初心者でもできる4大セルフメンテナンス
それでは、いよいよ実践編です。
ここでは、電動キックボードのメンテナンスで最も重要な4つのポイントを、手順を追って詳しく解説します。
① タイヤの空気圧チェック:パンク予防と乗り心地

タイヤは、人間でいう「靴」のようなもの。
空気圧が適正でないと、様々な不調の原因になります。
- チェック頻度: 最低でも週に1回
- なぜ必要?
- 空気圧が低いと: パンクしやすくなる、乗り心地が悪くなる、航続距離が短くなる、タイヤの摩耗が早まる。
- 空気圧が高いと: 乗り心地が硬くなる、グリップ力が低下して滑りやすくなる。
- 適正空気圧の調べ方: ほとんどの場合、タイヤの側面(サイドウォール)に「INFLATE TO 〇〇 PSI」や「〇〇 kPa」のように記載されています。取扱説明書にも記載があるので確認しましょう。
空気圧チェック&補充の手順
- バルブキャップを外す: タイヤの空気を入れる口(バルブ)についている黒いキャップを反時計回りに回して外します。
- 空気入れを接続: 空気入れの先端をバルブにしっかりと押し込み、レバーを倒してロックします。
- 現在の空気圧を確認: 空気入れの圧力計で、現在の空気圧を読み取ります。
- 空気を補充: ポンプを動かし、タイヤ側面に記載された適正空気圧まで空気を入れます。
- 空気入れを外す: レバーを戻し、素早く空気入れをバルブから引き抜きます。
- バルブキャップを締める: 最後にキャップを締めて完了です。

思ったより簡単!これなら毎週できそう。僕のタイヤには「50 PSI」って書いてあった!

素晴らしい!その調子です。空気圧を適正に保つだけで、パンクのリスクが劇的に減りますよ。
② ブレーキの調整:命を守る最重要項目
言うまでもなく、ブレーキは安全の最後の砦です。
効き具合は常にベストな状態を保ちましょう。
- チェック頻度: 走行前に毎回
- チェックポイント:
- ブレーキレバーを握った時、硬すぎたり、逆にスカスカだったりしないか?
- レバーとグリップの間に、指が2〜3本入るくらいの「遊び」があるか?
- ブレーキをかけた時に「キーキー」といった異音がしないか?
- しっかりと制動できるか?
ブレーキ調整の手順(ワイヤー式の場合)
- アジャスターを探す: ブレーキレバーの付け根と、ブレーキ本体(タイヤの近く)の2箇所に、ワイヤーの張りを調整するためのネジ(アジャスター)があります。
- 遊びを調整する:
- 遊びをなくしたい(効きを強くしたい)場合: アジャスターを反時計回りに回します。ワイヤーが張られ、ブレーキが早く効くようになります。
- 遊びを増やしたい(効きを弱くしたい)場合: アジャスターを時計回りに回します。ワイヤーが緩み、ブレーキの効き始めが遅くなります。
- 微調整: まずはブレーキレバー側の小さなアジャスターで微調整します。それでも調整しきれない場合は、ブレーキ本体側の大きなアジャスターや、ワイヤーを固定しているナットを緩めて調整します。
- 最終確認: 調整後、タイヤを浮かせて回転させ、ブレーキが引きずっていないか(タイヤがスムーズに回るか)を確認し、実際に軽く走行して効き具合を確かめます。
③ ネジの増し締め:走行中のガタつきと部品脱落を防ぐ

電動キックボードは走行中の振動で、知らず知らずのうちにネジが緩んできます。
放置すると部品の脱落など、大きなトラブルに繋がります。
- チェック頻度: 月に1回
- 重点チェック箇所:
- ハンドル周り: ハンドルポストの付け根、ブレーキレバーやアクセル、折りたたみ部分のレバーなど。
- 足回り: 前後ホイールのナット、フェンダー(泥除け)の固定ネジ、サスペンション部分。
- その他: ライト、キックスタンド、デッキ(ステップ)の裏側など。
増し締めの手順とコツ
- 適合する工具を選ぶ: ネジの頭に合ったサイズ・種類の工具(六角レンチやドライバー)を選びます。サイズが合わないとネジ山を潰す(なめる)原因になります。
- 適度な力で締める: 「キュッ」と締まる感覚があればOKです。力を入れすぎて締めすぎると、ネジや部品が破損する可能性があるので注意してください。
- 全体をチェック: 目に見える部分のネジを一つずつ確認し、少しでも緩みがあれば締め直します。
④ バッテリーの管理:寿命を2倍に延ばす秘訣

バッテリーは電動キックボードの心臓部であり、最も高価な部品の一つです。
正しい知識で管理すれば、寿命を格段に延ばすことができます。
- 管理のポイント:
- 過充電・過放電を避ける: 充電が100%になっても繋ぎっぱなしにする「過充電」、0%のまま長期間放置する「過放電」は、バッテリーの劣化を最も早める原因です。充電が完了したら速やかにプラグを抜き、残量が20%程度になったら充電するのが理想です。
- 適切な保管場所: バッテリーは極端な暑さ・寒さに弱いです。直射日光が当たる場所や、氷点下になるような場所での保管は避け、室内(15〜25℃が理想)で保管してください。
- 長期保管する場合: 1ヶ月以上乗らない場合は、バッテリー残量を50%〜80%程度にしてから保管するのが最も劣化を防げます。そして、3ヶ月に一度は状態を確認し、必要であれば充電してください。
- 必ず純正の充電器を使う: 仕様の異なる充電器を使うと、バッテリーの故障や火災の原因となり大変危険です。
プロが教える!ワンランク上のメンテナンス術
基本の4項目に慣れてきたら、さらに愛車を良い状態に保つためのメンテナンスにも挑戦してみましょう。
洗浄・清掃で見た目と性能を維持
定期的な洗浄は、見た目を綺麗に保つだけでなく、泥や砂利が原因のサビや部品の劣化を防ぐ効果もあります。
洗浄・清掃の手順
- 固く絞った濡れタオルで、フレームやデッキの泥汚れを拭き取ります。
- 落ちにくい油汚れは、パーツクリーナーをウエスに少量吹き付けて拭き取ります。
- 最後に乾いた布で水分をしっかり拭き上げます。
注意点: バッテリーやモーター、コントローラーなどの電装系に直接水をかけるのは絶対に避けてください。
高圧洗浄機の使用もNGです。
チェーン・駆動部の注油(該当モデルのみ)
一部のハイパワーモデルでは、自転車のようにチェーンで後輪を駆動している場合があります。
チェーンは定期的な清掃と注油が必要です。
チェーン・駆動部の注油の手順
- パーツクリーナーとブラシで古い油や汚れを落とします。
- チェーンのコマ一つ一つに、専用のチェーンルブ(潤滑油)を少量ずつ注油します。
- 注油後、余分な油をウエスで軽く拭き取れば完了です。
緊急時に慌てない!よくあるトラブルシューティング

どんなに気をつけていても、トラブルは起きてしまうもの。
ここでは、よくあるトラブルの原因と対処法を解説します。
ケース1:タイヤがパンクした!
パンクした場合の対処法
- 自分で修理する: 自転車のパンク修理と同様の手順です。パンク修理キットと交換用チューブがあれば可能ですが、後輪はモーターと一体化している場合が多く、難易度は高めです。
- 専門店に依頼する: 購入店や、電動キックボードの修理を受け付けている自転車店に持ち込むのが最も確実です。
- タイヤ・チューブごと交換: 摩耗が進んでいる場合は、修理ではなく交換をおすすめします。タイヤの溝が1mm以下になったら交換のサインです。
ケース2:ブレーキの効きが悪い・効かない!
原因の切り分け:
- ワイヤーの伸び: 上記の「ブレーキ調整」を試してください。
- ブレーキパッド/シューの摩耗: 調整しても効きが改善しない場合、ブレーキパッド(ディスクブレーキの場合)やブレーキシュー(ドラムブレーキの場合)が摩耗している可能性が高いです。これらは消耗品なので、定期的な交換が必要です。交換は難易度が高いため、専門店への依頼を推奨します。
ケース3:電源が入らない・バッテリーが充電できない!
原因の切り分け:
- 単純な充電忘れ: まずは充電されているか確認しましょう。
- バッテリーの過放電: 長期間放置してバッテリー残量が0%になると、保護回路が働いて充電できなくなることがあります。
- 充電器の故障: 充電器のランプが点灯しない場合、充電器自体の故障が考えられます。
- ヒューズ切れや断線: 強い衝撃などで内部のヒューズが切れたり、配線が断線したりしている可能性もあります。
これらが疑われる場合は、感電のリスクもあるため自分で分解せず、速やかに購入店やメーカーに相談してください。
ケース4:走行中に異音がする!
「キーキー」「カラカラ」といった異音は、何らかの不具合のサインです。
音の種類と発生場所から原因を探りましょう。
- ブレーキ周辺からの「キーキー」音: ブレーキパッドの摩耗や、ディスクローターの歪み、汚れの付着が考えられます。
- ホイール周辺からの「カラカラ」音: ベアリングの劣化や、フェンダーなどがタイヤに干渉している可能性があります。
- 折りたたみ部分からの「ギシギシ」音: ネジの緩みや、潤滑油切れが考えられます。増し締めや注油で改善することがあります。
【プロ厳選】メンテナンスが捗る!おすすめ用品3選
ここでは、私が実際に使ってみて「これは良い!」と感じた、初心者の方にもおすすめのメンテナンス用品をご紹介します。
工具セット:E-Value「バイク・自動車メンテナンス用ツールセット ETS-70M」
一家に一台あると非常に便利な、70点の工具が揃ったオールインワンセット。
六角レンチはもちろん、様々なサイズのソケットレンチやドライバーが含まれており、電動キックボードだけでなく、自転車や家具の組み立てなど、あらゆるDIYシーンで活躍します。
ケースに収納されているため、管理や持ち運びも簡単です。
電動空気入れ:パナソニック「電動マルチポンプ EZ1P31」
プロも愛用するパナソニック製のパワフルな電動空気入れ。
空気圧を設定すれば、あとはボタンを押すだけで自動で充填・停止してくれる優れものです。
コンパクトながら、電動キックボードはもちろん、自転車や自動車のタイヤにも対応可能。
LEDライト付きで、暗い場所での作業も安心です。
潤滑剤・グリス:KURE「チェーンルブスーパー」
自転車やバイクのチェーン用として定番の潤滑剤。
スプレータイプで使いやすく、優れた潤滑性・耐摩耗性・浸透性を誇ります。
フッ素樹脂(PTFE)配合で、潤滑効果が長持ちするのが特徴。
チェーンだけでなく、ブレーキレバーの可動部や折りたたみ機構の潤滑にも使用できます。
よくある質問(FAQ)
- Qメンテナンスは、どのくらいの頻度で行うのが理想ですか?
- A
走行前の毎回点検(ブレーキ、タイヤ)、週に1回の空気圧チェック、月に1回のネジ増し締めが理想的なサイクルです。
これを習慣にすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
- Q自分でメンテナンスするのが不安です。
プロに頼むと費用はどれくらいかかりますか? - A
店舗や作業内容によりますが、全体の基本点検であれば3,000円〜8,000円程度が相場です。
パンク修理やブレーキパッド交換など、部品交換が必要な場合は別途部品代と作業工賃がかかります。
- Q雨の日に乗った後は、特別なケアが必要ですか?
- A
はい、必要です。
まずは乾いた布で車体全体の水分をしっかり拭き取ってください。
特に電装系や金属部分の水分はサビの原因になります。
可能であれば、チェーンや可動部に注油しておくと、より良い状態を保てます。
- Qバッテリーの寿命はどのくらいですか?交換費用の目安は?
- A
一般的にリチウムイオンバッテリーの寿命は、充電回数で300〜500回、年数で2〜3年と言われています。
乗り方や保管状況によって大きく変わります。
交換費用は車種によりますが、30,000円〜100,000円以上と高額になるケースが多いです。
だからこそ、日々の正しい管理が重要なのです。
まとめ:メンテナンスを習慣にして、最高の電動キックボードライフを!
今回は、初心者の方でも自分でできる電動キックボードのメンテナンス方法を徹底解説しました。
- メンテナンスは法律上の義務であり、安全のために不可欠
- 基本は「タイヤ」「ブレーキ」「ネジ」「バッテリー」の4大チェック
- 空気圧は週1回、ネジは月1回のチェックを習慣に
- 正しいバッテリー管理が寿命を延ばし、コストを抑える
- 便利な工具を揃えれば、メンテナンスはもっと楽しくなる
最初は少し面倒に感じるかもしれませんが、慣れてくれば短時間でできるようになります。
何より、自分で手をかけた愛車には、より一層の愛着が湧くはずです。
この記事を参考に、ぜひセルフメンテナンスに挑戦してみてください。
そして、安全で快適な電動キックボードライフを存分に楽しみましょう!